・DNAプロディ解析 骨肉腫についてのDNA顕微蛍光側光法を用いたDNAプロイディ解析では異数倍体細胞の多く出現する異数倍体増殖腫瘍の方が2倍体増殖腫瘍よりも薬剤に対する感受性が高く、生命予後が良いことが分かった。 ・アドリアマイシン結合能による薬剤感受性判定法(Adriamycin Binding Assay:ABA)を用いた解析 ABAを用いて原発性悪性骨軟部腫瘍(stageII)11例に対する病理組織学的腫瘍壊死率により判定した術前化学療法の効果と生検時の落射型蛍光顕微鏡視下に生細胞で核内からADRの蛍光を発する細胞の出現頻度(%AB)と比較検討した。病理組織学的腫瘍壊死率による薬剤効果評価はCR1例、PR4例、NC3例、PD3例であり、化学療法が有効と判定されたCRおよびPRの5例は全例%ABが80%以上で平均値は90.7%と高値であった。一方、化学療法が無効と判定されたNCおよびPDの6例は全例%ABが80%未満で平均値は16.4%と低値であった。予後に関しては、PD3例中2例とNC3例中1例が肺転移を生じ死亡した。PR4例中2例はCDFであるが、他の1例は単発の肺転移巣を切除した後化学療法を施工し2年以上生存している。以上の結果より、ABAの生検材料を用いた薬剤感受性評価とアドリアマイシンを含む術前化学療法の組織学的腫瘍壊死率による薬剤効果評価の間には良好な相関があることが判明した。このことはABAが精度の高い薬剤感受性試験であることを示していた。 ・薬剤耐性マウス骨肉腫細胞株の樹立とその細胞生物学的特徴の解析 当科で保有しているハーバード大学より譲渡された放射線誘導マウス骨肉腫細胞株に0.001μg/mlのADRを暴露して培養し続け、さらに濃度を上げていくことによりADR耐性マウス骨肉腫細胞株を樹立することができた。この細胞株はADR感受性の親株よりも増殖速度が遅く、骨形成能が高いことが分かった。また、ビンクリスチンに対しても耐性であった。ABAでは%ABは0%でP糖蛋白質陽性であることが判明した。
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