研究概要 |
平成7年と8年度のヒト骨肉腫症例のDNAプロイディ解析の結果では異数倍体増殖を示す骨肉腫のほうが2倍体増殖のものよりも統計学的に有意に生命予後が良いことが判明した。これらの症例は全例化学療法と広範囲腫瘍切除を受けており、2倍体骨肉腫は化学療法に対して薬剤抵抗性である可能性が高いと考えた。また、生検時と術前化学療法後の切除腫瘍のDNAプロイディの変化と組織学的腫瘍壊死率との関連では異数倍体骨肉腫で異数倍体や多倍体細胞が減少または消失する例ほど壊死率が高く、2倍体骨肉腫ではこのような変化は少なく壊死率も低かった。以上より薬剤耐性骨肉腫は2倍体増殖のものが多く、この原因は2倍体腫瘍細胞の薬剤感受性が低いことによると結論した。アドリアマイシン(ADM)結合能と壊死率の関連では結合能が80%以下の例は壊死率が有意に低いことが判明した。さらに、P糖蛋白質の細胞レベルでの陽性度と壊死率の間には相関はなかった。これらのパラメーターと生命予後との関連については次年度に解析する。 放射線誘発のマウス骨肉腫細胞株(MOS)からADM負荷による多剤耐性骨肉腫株を樹立することに成功した。本腫瘍細胞の細胞増殖速度はMOSと同じであり、高いALP活性も有している。C3Hマウスへの移植ではMOSよりも豊富な類骨形成を示す特徴を有していた。耐性度はMOSに対しADMで15倍以上でvincristin, vinblastin, VP16, bleomycinなどにも5倍以上の耐性を示した。しかし、cisplatin, carboplatin, methotrexate, ifosfamideなどには耐性はなかった。この耐性株に耐性克服剤としてverapamil, trifluoperazine, cyclosporin Aを用いたところいずれも耐性を解除することが分かったが、中でもverapamilが強い克服作用を示した。今後さらにこの細胞を用いてcyclosporinやquinolinの誘導体および界面活性剤などの克服作用を検討する。
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