研究概要 |
特発性側弯症の病因を解明するために,特発性側弯症の血清メラトニンの定量および日内変動パターン(サーカディアンリズム)を用いて,これまで検討してきた。その結果,特発性側弯症の進行例ではメラトニンの分泌量とくに夜間に低下していることが明らかとなり,また血清メラトニンを定量することにより側弯変形の進行もある程度予測可能となった。しかし,これまでの対象が思春期側弯症であったため,今年度は乳幼児側弯症10例および先天性側弯症5例を対象とした。乳幼児側弯症は3歳以下に発症する特発性側弯症で,緩解型と進行型の2型に分類できる。しかし,早期に両者を鑑別診断することは不可能であった。今回,これらの両者の血清メラトニン量を定量した結果,緩解例では正常であったが,進行例では夜間分泌量が低値であった。このことから,側弯変形の進行を血清メラトニン量を定量することにより予測可能であることが再確認できた。しかし,脊椎の先尺奇形による先天性側弯症では進行の有無にかかわらず,血清メラトニン量および日内変動パターンには異常がみられなかった。以上のことから,特発性側弯症と先天性側弯症では病因が同一では無いこと,特発性側弯症の進行にはメラトニンが関与しており,血清メラトニン量の低値は側弯変形の結果ではなく,病因であると考えられる。
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