研究概要 |
特発性側弯症の病因を解明するために,3時間毎に血清メラトニンの定量およびその日内変動パターンを用いて検討した。対象は健常小児15名,思春期特発性側弯症の手術症例30例,乳幼児期特発性側弯症2例,20〜30のコブ角を有し外来通院加療中の思春期特発性側弯症を検査した。その結果,健常小児では,血清メラトニン量が21時より増加し,3時にピークとなり6時には減少,その後プラトーとな日内変動パターンがみられた。特発性側弯症例でもこのような日内変動パターンがみられたが,0時から6時までの夜間メラトニン量が1年間に10°以上側弯変形が進行する症例では,統計学的に有意に低値であった。同様な変化が乳幼児期特発性側弯症でもみられた。緩解例では血清メラトニン量が正常であったが,進行例では,夜間メラトニン量が低値であった。また,経過観察にて通院加療中の思春期特発性側弯症でも,血清メラトニン量が正常であれば,側弯変形の進行はみられなかった。以上の結果から,特発性側弯症の進行例ではメラトニンの分泌が低下しており,また血清のメラトニンを定量することにより側弯変形の進行も予測することが可能と思われた。さらに,特発性側弯症の一次的原因にメラトニンの関与が考えられた。
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