研究概要 |
切断された末梢神経の再生を誘導するための生体内吸収型人工神経補助グラフトの開発と,末梢神経同種移植における免疫抑制方法を検討し,次の成果を得た. 1.生体内吸収型コラーゲン神経再生補助グラフトの研究 豚皮から酢酸抽出されたI型コラーゲンを用い電極吸着法で直径2nm,長さ12mmのコラーゲン外筒を作製し,同じコラーゲンから湿式紡績法で得た直径70μmのコラーゲン糸を100本同外筒の中に長軸方向に入れたグラフトを準備した.このグラフトにPBSに溶解したラミニン,フィブロネクチン,NGF-7Sを吸着させ,Wistarラット成体の坐骨欠失部に埋植した.移植30日目,グラフトのコラーゲンは全て吸収消失したが腓腹筋から誘発筋電図が得られ,グラフトを越えて神経が末梢まで成長長再生したことが示された.ラミニン,フィブロネクチン,NGFの三重コーティング処理グラフトが最も速やかに神経組織を再生発達させた.(湯浅ら:第11回日本整形外科学会,10月,鹿児島,1996;湯浅:金医大誌,発表予定). 2.組織適合抗原が異なるラット間の神経移植 MHCとしてのRT1がlv1であるF344ラットをドナーとしRT1がlであるLEWラットをレシピエントとしたとき,新鮮末処理坐骨神経では多数のリンパ球浸潤と再生破壊がみられた.神経片を凍結融解処理することによってやや良好な神経組織の再生をみたが,MCVにおいて正常神経より劣っており,少数のリンパ球浸潤が認められた.凍結融解処理に免疫抑制剤FK506投与を加えると,組織再生MCV値とも正常に近く改善された(平井ら:第7回日本医工学治療学会,2月,名古屋,1995;越田ら:第10回日本整形外科学会,10月,軽井沢,1995).
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