研究概要 |
切断された末梢神経の再生を誘導するための生体内吸収型人工神経補助グラフトの開発と,末梢神経同種移植における免疫抑制方法を検討し,次の成果を得た. 1.生体内吸収型コラーゲン神経再生補助グラフトの研究 豚皮から酢酸抽出されたI型コラーゲンを用い電極吸着法で直径2mm,長さ12mmのコラーゲン外筒を作製し,同じコラーゲンから湿式紡績法で得た直径70μmのコラーゲン糸を100本同外筒の中に長軸方向に入れたグラフトを準備した.このグラフトにPBSに溶解したラミニン,フィブロネクチン,NGF-7Sを吸着させ,Wistarラット成体の坐骨神経欠失部に埋植した.移植30日目,グラフトのコラーゲンは全て吸収消失したが腓腹筋から誘発筋電図が得られ,グラフトを越えて神経が末梢まで成長再生したことが示された.ラミニン,フィブロネクチン,NGFの三重コーティング処理グラフトが最も速やかに神経組織を再生発達させたが、NGFのみをコーティングしたグラフトにおいても、運動ニューロンの成長発達が促進された。 2.組織適合抗原が異なる同種間および異種間の神経再生 SHRラットからF344ラットへの坐骨神経移植とHartrayモルモットからF344ラットへの移植を行うとき、新鮮末処理神経グラフトでは多数のリンパ球湿潤と再生神経破壊がみられた.神経片を凍結融解処理することによってやや良好な神経組織の再生をみたが,MCVにおいて正常神経より劣っており,少数のリンパ球湿潤が認められた.ドナーグラフトをtriton X-100で処理すると、移植時リンパ浸潤は強く抑制され、さらにラミニン、フィブロネクチン、NGFをコーティングすると神経線維の再生成長は有意に促進された。
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