骨粗鬆症の骨髄細胞におけるシグナル伝達異常の解析とその調節による治療法の開発

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07457346
• 研究機関: 産業医科大学
• 研究代表者: 中村 利孝 産業医科大学, 医学部, 教授 (50082235)
• 研究分担者: 田中 良哉 産業医科大学, 医学部, 助手 (30248562) ; 岡部 聡 産業医科大学, 医学部, 助手 (00248577) ; 酒井 昭典 産業医科大学, 医学部, 講師 (90248576)
• キーワード: GP130抗体 / インターロイキン6 / 卵巣摘出ラット / 海綿骨 / 破骨細胞 / 骨芽細胞 / 骨形成率 / エストロゲン

研究概要

平成9年度の研究ではヒトGP130に対するモノクロール抗体で、interleukin(IL)-6とleukemia inhibitory factor(LIF)の効果をブロックすることが知られているGPX7を用いて、これらのサイトカインシグナルのブロックによる破骨細胞と骨芽細胞の機能の変化を検討した。7カ月齢のWistarラットで卵巣摘出群と正常群を用意し、GPX7を蛋白量で1mg/kg(低用量)または4mg/kg(高用量)を週1回皮下注射した。件ではGPX7を使用した群では、骨ミネラル量も椎体の海綿骨量もsham群と同じレベルに維持された。高用量群では海綿骨表面で破骨細胞が覆おう面と細胞数は卵巣摘出群よりも有意に小さかった。GPX7高用量群の骨形成率は、卵巣摘出群よりも有意に増加した。しかし、脛骨近位の骨幹端部では骨ミネラル量はsham群よりも小さかった。ただし、海綿骨の骨梁幅はsham群と同じレベルを維持し、卵巣摘出対照群よりも大きかった。海綿骨梁での破骨細胞数は少なく見えたが、卵巣摘出群との統計学的差は有意ではなかった。17beta-estradiol0.125mg/kgの週1回投与では、腰椎、脛骨ともに卵巣摘出によるこつ量減少は完全に防止され骨吸収、骨形成の指標もsham群と同じレベルに止まった。GPX7を正常ラットに投与した場合には、GPX7によるIL-6のシグナル伝達抑制は、卵巣摘出による骨リモデリングの異常を変化させ、骨量減少に対して抑制的に作用することを明らかにした。しかし、その効果は、エストロゲン補充とは異なっていることを示した。従って、GP130シグナルシステムの亢進はエストロゲン欠乏の一部に過ぎないものと思われた。(738字)

研究成果

• [文献書誌] Ohnisi H, Nakamura T, et al.: "Bisphosphonate tiludronate increases bone strength by improving mass and structure in established osteopenia after ovariectomy in rats." Bone. 21. 335-343 (1997)
• [文献書誌] Nakamura T: "Vitamin D for the treatment of osteoporosis." Osteoporosis International. 7(Suppl.3). S155-158 (1997)
• [文献書誌] Nishida S, Nakamura T, et al.: "Effect of monoclonal anti-human GP130 antibody(GPX7)on bone turnover in normal and ovariectomized rats." Calcif Tissue International. 62(in press). (1998)
• [文献書誌] Yoshida Y, Nakamura T, et al.: "Responses of trabecular and cortical bone turnover and bone mass and strength to bisphosphonate YH529 in ovariohysteretomized beagles with calcium restriction." Journal of Bone and Mineral Research. 13(in press). (1998)
• [文献書誌] Okimoto N, Nakamura T, et al.: "Effects of a weekly injectin of human parathyroid hormone(1-34)and withdrawal on bone mass,strength,and turnover in mature ovariectomized rats." Bone. 22(in press). (1998)