研究概要 |
研究の成果は3つに大別される。第1は、卵巣摘出による骨粗髪症動物モデルにおいて、ビフォスフォネートを使用して骨組織の表面で破骨細胞の機能をブロックした場合に生じる骨の梁と構造と強度の変化を明らかにした。第2は、全身性炎症による骨量減少モデルであるアジュバント関節炎ラットを用いて、全身性炎症における管リモデリングの異常を明らかにし、骨髄での細胞の分化を制御するインドメタシンやメソトレキセートを使用した場合のリモデリングの改善状態を明らかにした。第3は、急性のエストロゲン欠乏状態におけるリモデリングの異常を経時的に明らかにし、インターロイキン6,11などの細胞内シグナル伝達をGP130の抗体を用いてブロックした場合のリモデリングの変化を明らかにした。 これらの一連の研究結果から、卵巣摘出、全身性炎症などにおける骨量減少では、骨吸収の増加が重要であることが明らかになった。骨髄でのIL-1,IL-6,IL-11,TNF,prostaglandinなどのサイトカインの増加が、骨髄における破骨細胞分化亢進のシグナルとなっていることが示された。炎症では活性化されたT細胞が、卵巣摘出では女性ホルモンの減少が、ともにこれらのサイトカインを増加させ、骨髄で破骨細胞を増加させると考えてよい。しかし、これらのサイトカインネットワークの一部をブロックすることは、骨の量と構造を維持するには必ずしも有用ではない。骨粗鬆症の治療には、これらの1つ1つのサイトカインの制御ではなく、骨吸収を包括的に制御することが有効であろう。(660字)
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