研究概要 |
ラットを使った実験であるが、出血させてから2時間の経過で肝臓のNOが上昇することは報告されている。しかし、肝細胞に対して保護的に働くか、障害的に働くかは異論があるところである。一方、手術中に発生するもっと短時間の急性出血性ショックでもNOが増加するのか否かは検討されていない。2年度はこれらの未解明の点を明らかにするため以下の実験を行った。 <方法>15頭の成犬を3群に分けた。1群は出血性ショックを30分持続させた。II群では10分間の出血性ショック後に返血し、ショックから回復させた。III群ではNO合成酵素阻害薬であるL-NAME30mg/kgを投与してから10分間の出血性ショックを発生させ返血した。肝臓組織内のNO変化を電気的変化で促える装置(NO測定器)でNO-related electrical current(NO-REC)を測定し、肝臓表面に留置したレーザー血流計では肝血流を測定した。 <結果>出血ですべての成犬は平均血圧が40mmHg以下に低下した。NO-RECは、1群では46±40から30分後に6,074±2451pA(Mean±SE)まで上昇した。II,III群ともに10分間のショックで有意に増加し、II,III群間でのNO-RECには有意差がなかった(2,197±786vs986±77pA,p=0.15)。ショックを誘導するための出血量(III群=441vsI群=319,II群=343ml)と時間(III群=365vsI群=234,II群=260秒)はIII群で有意に高かった(p<0.01)。 <結論>NO-RECは10分間という短時間の急性出血性ショックでも上昇した。ショックの早朝から肝臓ではecNOSからNOが産制増加をきたし、肝細胞障害的に作用している可能性がある。この増加はL-NAME30mg/kgでは抑制できなかった。
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