幼若ラット小脳薄片のcGMP生成量に及ぼす麻酔薬の影響について、昨年度までに揮発性麻酔薬とバルビツレートについて検討したので、本年度はバルビツレート以外の静脈麻酔薬について検討した。その結果、10-100μMの濃度において、ケタミンはNMDA、ミダゾラムはカイニン酸刺激によるcGMP生成のみをそれぞれ強く抑制した。GABA存在下では、ミダゾラムはNMDA刺激によるcGMP生成も抑制した。プロポフォールは10μMではNMDA刺激によるcGMP生成のみを抑制し、100μMでカイニン酸刺激によるものも抑制した。NO合成酵素(NOS)を介さずにNOを遊離するニトロプルシッドによるcGMP生成は、100μMまでの各麻酔薬で抑制されなかった。即ち、上記の麻酔薬はNMDAまたは非NMDA受容体には作用するが、少なくとも臨床濃度では、NOSやグアニレートサイクラーゼ(GC)に有意の作用を示さないことが明らかにされた。 ラット大動脈を用いた検討から、局所麻酔薬は内皮依存性弛緩反応を抑制するが、その作用機序は局麻薬により異なっている。テトラカインはGCを抑制するが、ロピバカインはcGMP生成を全く抑制せず、したがってその内皮依存性脂環反応抑制効果にはNO-cGMP系が関与していないことが示された。 ヒト血小板浮遊液をprostaglandin I_2で処置し血小板凝集を抑制した条件のもと、カルシウムおよびL-アルギニンの存在下、コラーゲンで刺激して生成されるNO量をNO分析計(シ-バース社製)で測定した。処置群では同様の測定をハロタン存在下に行った。その結果、ハロタンは上記の条件下では血小板におけるNO生成を抑制しないことが明らかになった。現在、他の麻酔薬についての検討を進めている。
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