研究概要 |
95%N_2-5%CO_2飽和グルコース欠乏液を投与(脳虚血類似負荷)すると、約6分後に急峻な脱分極電位が発生し、この時点で95%O_2-5%CO_2飽和グルコース含有液に戻しても、膜電位は脱分極し続け、不可逆的変化が生じた。シナプス伝達に関しては、fast EPSP、fast IPSP、slow IPSPの振幅減少が虚血類似負荷1.5分後より始まり、4分後には著明に抑制された。そこで、シナプス後電位の抑制機序をsingle electrode voltage-clamp法で検討した。虚血類似負荷すると、4分後にfast EPSCは著明に抑制され、fast and slow IPSCsは消失した。一方、glutamateおよびGABA誘起電流の振幅は増大したが、GABA_A receptor agonist,muscimolおよびGABA_B receptor agonist,baclofen誘起電流はは減少あるいは消失した。以上の結果は、虚血類似負荷によるfast EPSCの抑制がシナプス前性で、fast and slow IPSCsの抑制がシナプス前性および後性であることを示唆した。この抑制起序にacidosisが関与するかどうかを検討する目的で、酸素・グルコースを含有低HCO_3(5mM)Krebs液(pH6.9)を潅流投与した。3分後fast EPSCとfast and slow IPSCsは著明に抑制され、muscimol、baclofen 誘起電流も共に抑制されたが、glutamate誘起電流には変化がなかった。すなはち、acidosisによるfast EPSCの抑制はシナプス前性で、fast and slow IPSCsの抑制はシナプス前性および後性であった。本実験結果から、脳虚血下でのシナプス伝達抑制にはacidosisがその一因となっていると思われる。
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