研究概要 |
成熟ラット海馬スライス標本を作成してエネルギー欠乏状態(虚血類似負荷)にすると、海馬錐体細胞は一過性の過分極電位と緩徐な脱分極電位を誘起した後、約6分後に急峻な脱分極電位が発生して不可逆的変化が生じた。虚血類似負荷(あるいは低酸素負荷)による過分極電位の振幅の70%はK_<ATP> channel blocker glybenclamide、tolbutamideで抑制され、30%は1/10xCa^<2+>液、BAPTA-AM、Ca^<2+> release inhibitor,procaine、calmodulin(CaM)inhibitor,W-7、CaM kinase II inhibitor,KN-62(20μM)によって抑制されたことから、過分極電位が主にK_<ATP> channelとKCa^<2+> channelの活性化によって発生すると思われた。緩徐脱分極電位は逆転電位が+5mVにあり、その振幅はnon-NMDA receptor antagonist,CNQX、NMDA receptor antagonist,AP-5で可逆的に抑制された。また、潅流液中のglutamate濃度は虚血類似負荷2分後から次第に上昇した。以上の結果は、緩徐脱分極電位の発生にglutamate receptors(殊にNMDA receptor)の持続的活性化が関与していることを示唆した。急峻脱分極電位は逆転電位が-15mVにあり、1/10xNa^+、1/10xCa^<2+>液中で有意に過分極側に移行し、1/3xCl液中では脱分極側に移行した。1/10xK^+液中では有意な影響は認めなかったが、これは細胞間液K^+蓄積を除去できなかったためと思われる。すなわち、急峻脱分極電位は膜電位非依存性で、非選択的イオン透過性上昇に基づくと考えられた。
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