出生率低下による人口減少が憂慮される状況下にある現在、不妊症の治療の進歩が期待されているが、不妊症の原因の約半数を占める男性不妊症に対する治療は満足できるものではなく、特に男性不妊症の原因の半数以上を占める特発性精子形成障害の病態は未だ不明であり、治療成績も不良である。このため精子形成機構の解明が、特発性精子形成障害の治療に最も必要されている。本研究では以下の項目について本年度行った。 1.男性不妊症患者のDNA分析により発見したY染色体長腕上に存在するAZFのcloningを行うため、AZFを含むlocus DYS 7Cのfragmentをcosmidに入れ、塩基配列を決定しつつある。 2.マウス精巣の精細胞を特異的に認識する種々の抗体を作製し、この抗体をプローブとしてマウス精巣cDNA libraryより新たな精細胞分化誘導物質のcDNAのcloningを行い15のclonesを単離した。その一部の塩基配列を決定し、新たな遺伝子を複数同定した。現在全長の塩基配列を決定し、機能解析を行いつつある。 3.マウス精巣のmeiotic stageの精細胞に強く発現する新しいステロイド受容体TAK-1とRTRのcDNAをプローブとして、ヒト精巣cDNA libraryより人TAK-1、ヒトRTRをcloningしつつある。
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