男性不妊症の原因の約半数を占める特発性精子形成障害の理論的治療法の確立をめざして、本年度は以下の研究を行った。 1.AZFのcloning 男性不妊症患者のDNA分析により発見したY染色体長腕上に存在する精子形成関連遺伝子AZFのcliningを行うため、無精子症患者または乏精子症患者のY染色体欠失地図を作成し、AZFが存在する座位の欠失区間を同定した。さらに、AZFが含まれるYACを特定し、YACから作成したcosmid libraryを用いて、cosmid contigを作成した。さらにこれをrestriction cutし、plasmidにsubcloningた。現在、無精子症患者父子の微妙な欠失の違いからAZFを、約30kbの範囲内にしぼりこんだ。また、Exon tapping法によっても、AZFのconingを同時進行で行っている。 2.ヒト精細胞分化誘導遺伝子のcloning マウス精細胞を特異的に認識する種々の抗体を作成し、この抗体をプローブとしてマウス精巣cDNA libraryより19 cloneを単離した。このうち、mouse SCP-1をプローブとしてヒト精巣cDNA libraryよりhuman SCP-1をcloningした。humanSCP-1は精細胞の減数分裂前期に出現し、正常な分裂に必要な構造体であるsynaptonemal complexの一部を構成する蛋白をコードし、精細胞の分化に重要な役割を有していると考えられた。 3.精細胞培養系の確立 上記遺伝子のcloningをふまえ、上記遺伝子導入実験の予備実験として、ラット精細胞をin vitroで一定期間培養することに成功した。
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