研究概要 |
3年間の研究実績を概説する。大腸菌または緑膿菌を経尿道的にマウスに膀胱注入することにより実験的上行性腎盂腎炎を発症させ、経時的に感染局所の感染免疫応答を検討した。正常免疫能宿主の局所感染粘膜免疫応答としては、非感染時より少数の抗原提示能を有するIa陽性細胞が存在し、感染と同時に局所で増加し、続いて感染早期の6時間目にはマクロファージ、好中球、T細胞(CD4,CD8,γ/δ型)が浸潤し、少し遅れてIgA陽性B細胞が浸潤することが判明した。これは従来考えられていたより早期にT細胞が感染局所に浸潤し、急性感染の防御に直ちに関わっていることが判明した。一方、コンプロマイズド宿主としての好中球遊走能障害宿主では好中球のかわりにマクロファージ、CD4陽性T細胞、IgG陽性B細胞の浸潤が増加し、またT細胞障害宿主ではT細胞とB細胞浸潤は激減し、好中球が顕著に浸潤した。また好中球とT細胞機能が障害された糖尿病宿主では好中球とマクロファージの浸潤が顕著であった。このようにコンプロマイズド宿主では障害細胞を他の免疫関連細胞が補足するような免疫応答であった。次に宿主側に対する治療目的でT細胞障害宿主に対し、IL-2,IFN-γ,TNF-αを投与したところ、TNF-αはそれ程効果は認められなかったものの、IL-2とIFN-γはT細胞の機能を回復させた。しかし、糖尿病宿主に対し、治療目的でIL-2,TNF-α,G-CSFを投与しても明らかな免疫応答の回復は認められなかった。そこで免疫関連細胞の局所浸潤を調節していると考えられる炎症性サイトカインmRNAと接着分子であるICAM-1の細胞浸潤との関連を検討したところ、各種免疫関連細胞の浸潤は経時的にこれらに調節されていることが考えられた。
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