研究概要 |
今回の検討に際しては、採血の時点で全て患者さんより口頭承諾を得た後上実施した。 1.未治療腎細胞癌93例の主要組織適合抗原(HLA)の発現頻度を、健常日本人対照939例のそれと比較した結果、腎細胞癌に有意に発現の高いHLA抗原は存在しなかった。従って、腎細胞癌の発癌に関連するようなHLA抗原は存在しないと考えられた。また逆に、腎細胞癌が健常日本人対照に比較して有意に発現の低い5HLA抗原(B35,Bw48,CRw6,CRw8,DR9)の存在が明かとなった。これら腎細胞癌にneagtive aassociationを示した5抗原の免疫学的解釈として、以下の仮説を立案した。つまり、1)もしこれら5抗原の発現が腎細胞癌患者(腎腫瘍細胞上)に認められたなら、自己免疫担当細胞に認識され、その結果腫瘍細胞が排除された可能性、2)インターフェロン-α(IFN-α)などの投与により、HAL抗原の発現増強と自己免疫担当細胞の賦活により腫瘍の排除が生じた可能性がある、との仮説である。 2.日本中より集めた進行性腎細胞癌に対するIFN-α投与症例の解析により、不完全寛解(PR)および完全寛解(CR)の得られた37症例のHLA抗原の発現状況を検討した結果、以下の結論を得た。すなわち、前述5抗原の内、3抗原(B35,Bw48,DR9)の発現が、未治療腎細胞癌および健常日本人対照に比較して、IFN-α感受性症例に有意に発現が高かった。これら3抗原の内、HLA class I(B35およびBw48)は、腫瘍排除抗原(tumour-rejecting antigens: TRA)をそのglobe内に発現している可能性がある。一方、HLA class II抗原(DR9)は、抗原提示胞上に発現することで、免疫的pathwayが自己免疫担当細胞に伝わる上で重要な抗原となるばかりか、CD4-陽性リンパ球のtargetとして重要な腫瘍に発現すべき抗原となる可能性があると考えられた。
|