研究概要 |
『研究目的』腎細胞癌の治療の面から、まず効果的interferon(IFN)療法遂行上重要となる臨床的事項を解析し、さらに基礎的に主要組織適合抗原(HLA)を基に腫瘍免疫の立場から解析を試みた。 『研究計画』1.進行性腎細胞癌に対するIFN療法の予後に及ぼす効果をhistorical controlと比較検討した。2.進行性腎細胞癌に対しIFN-αが奏効した症例のHLA phenotypeを解析した。3.HLA class III locus近傍に遺伝子座を有するTNF geneのpolymorphismと生物学的特性を解析した。 『結果』1.進行性腎細胞癌にIFNを中心とした療法を施行した症例は、それ以外の療法を施行した症例に比較して有意に生存率良好であった。特に、(1)performance status(PS)0の症例、(2)原発巣がlow stage and/or low gradeで再発を認めた症例、(3)転移臓器数が少ない症例(特に肺転移症例)、(4)no change(NC)期間の延長した症例に、IFN投与が有効であった。2.未治療腎細胞癌(93例)、IFN-α奏効症例(37例)および健常日本人の3群間でHLA phenotypeを比較した結果、(1)未治療腎細胞癌では6HLA抗原(B35,Bw48,Bw60,DRw6,DRw8,DR9)の発現が健常日本人に比較して有意に低かった(negative association)。(2)IFN-α奏効症例ではこれら6抗原中、逆に3抗原(B35,Bw48,DR9)の発現が有意に他の2群に比較して高かった(positive association)。3.TNF-β 1/1 homozygoteはTNF-β heterozygoteやTNF-β 2/2 homozygoteに比較して有意に生存率が良好であった。つまりTNF-β high producerであるTNF-β 1/1は生体防御の面で重要なzygoteとなることが示唆された。 『今後の展望』1.IFN療法が奏効する可能性のある因子の整った症例に対するprospective study。2.Bw48を中心にHLA glove内の腫瘍拒絶抗原の解析。3.TNF-β 1/1症例のTNF-β産生能と予後に関するprospective study。4.T-helper subset(Th1/Th2)を基盤に腫瘍-宿主間の免疫応答とHLA。
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