研究概要 |
細胞表面受容体とエフェクター分子(細胞内情報伝達物質産生系)との間でGTPと結合する三量体の制御蛋白質(Gタンパク)が伝達器として機能している。このGタンパクは単に情報の流れの仲介役としてだけではなく,流れてゆく情報の遮断・増幅・減衰といった調節も行っている。そこで、本研究では、内膜癌や卵巣腫瘍の増殖機構におけるGタンパクの役割を解明することを試みた。平成7年度に明らかになった事項は以下である。 1)内膜癌・卵巣癌のGタンパクは蛋白質チロシンリン酸化とカップルしていること(Cancer 77:132,1996)。 2)内膜癌・卵巣癌のGタンパクはGiファミリーに属すること(投稿中)。 3)卵巣癌ではゴナドトロピン放出因子受容体が高頻度に発現しているが(Cancer 74:2555,1994),この受容体はGiファミリーを介して,蛋白質脱リン酸化(フォスファターゼ)を抗進すること(Cancer 77:132,1996)。 4)その結果,すべてのリン酸化酵素(キナーゼ)と拮抗することになり,細胞増殖を抑制すること(Gynecol Oncol 58:110,1995)。 5)このゴナドトロピン放出因子受容体→Gタンパクの異常が一部のホルモン依存性腫瘍で生じていること(投稿中)。 以上の結果は,癌のホルモン療法や遺伝子治療を再考する上で意義深い。
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