研究概要 |
ホルモン感受性腫瘍細胞ではそのホルモンによってアポトーシスが生じ,増殖が例が少なくない。生殖器腫瘍ではGnRH受容体が高頻度に存在しており,GnRHアナログがin vivoおよびin vitroでアポトーシスを惹起し,抗腫瘍効果を発揮する。ところで,生体内でアポトーシスが誘発される際,Fas・Fasリガンド系が関与していることが広く受け入れられている。平成8年度は,生殖器腫瘍のGnRH受容体活性化とFas・Fasリガンドについて検討した。手術的に摘出した卵巣癌または子宮内膜癌のGnRH受容体を予めスクリーニングした。FasならびにFasリガンドはそれらのmRNAの存在ならびに抗体に対するimmunoreactivityで定量した。GnRH受容体陽性の細胞にはFasリガンドの受容体であるFasが高頻度に存在しているが、Fasリガンドは検出されなかった。しかし,GnRHと48時間以上活性化すると,FasリガンドmRNAが発現し蛋白レベルでも検出された。しかも,GnRH受容体をGnRHアンタゴニストで予め占有すると,GnRHのFasリガンド発現効果が阻害された。つまり,腫瘍GnRH受容体が活性化されると,Fasリガントが出現する。このFasリガントは腫瘍内に広く分布しているFasと結合し,増殖を抑制するものと思われる。つまり,GnRHアナログの抗増殖効果はアポトーシスを惹起することによって発揮されることが推測された。
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