単クローン抗体を用いたヒト黄体細胞の分化抗原および分化機構の解析

1995 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07457385
• 研究種目: 一般研究(B)
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 森 崇英 京都大学, 医学研究科, 教授 (90026865)
• 研究分担者: 今井 公俊 京都大学, 医学研究科, 助手 (90252436) ; 藤原 浩 京都大学, 医学研究科, 講師 (30252456)
• キーワード: 単クローン抗体 / 黄体細胞 / 分化抗原 / 抗原精製 / アミノ酸シークエンス

研究概要

卵胞および黄体の主要構成細胞である顆粒膜細胞と莢膜細胞は、卵胞発育、卵胞閉鎖、黄体形成、および黄体退縮にともなって、自ら増殖・分化・細胞死を呈する極めて特徴的な内分泌細胞である。数年前より我々は、顆粒膜細胞および莢膜細胞の分化段階または各々の細胞に特異的に発現する抗原の存在を想定して、その特異抗原を捉えることを試みてきた。もし特異抗原を捉えることができれば、それは卵巣細胞の分化制御における局所調節に深く関わっている可能性が高いと考えられ、未知のものであれば、遺伝子解析も含め更に追及していく必要がある。現在まで黄体の分化抗原はほとんど知られていなかった。そこで我々は、それらの抗原を捉えて、現在までほとんど解明されていなかった黄体の分化機構にさらに新しい糸口を見い出す目的で、本研究において、ヒト黄体そのものを免疫原として黄体細胞に対する単クローン抗体作成し、顆粒膜・莢膜黄体細胞に特異的な細胞表面抗原をいくつか捉えることにした。
平成7年度の研究計画に基づき実験をすすめていったところ、黄体細胞の分化抗原を認識する抗体が7種類作成できた。そのうち3種類については抗原の精製その他の分析が進み、HCL-2と名づけた抗原に関しては部分アミノ酸シークエンスも判明し、LDL坦体蛋白であることが同定できた。現在この情報を基に様々なヒト卵巣細胞のステロイド産生に関する新しい知見を得ているところである。他のHCL-1とHCL-3抗原に関しては大量精製が困難であっため、当初の計画通りcDNAライブラリーより塩基配列を決定する予定としており、平成8年度研究計画に記した方法で準備を進めつつある。以上本研究は、当初計画していた以上にスムースに進んだと思われる。その最大の原因はスクリーニング法に工夫を加えたため目的とする抗体が確実に作成できたことによると思われる。このことは、本研究のようなアプローチが極めて有効であることを示しており、今後の発展が期待できるものと思われる。

研究成果

• [文献書誌] Fujiwara H, et al.: "A differentiation antigen of human large luteal cells in corpora lutea of the menstrual cycle and early pregnancy." Biology of Reproduction. (in press). (1996)
• [文献書誌] Fujiwara H, et al.: "Granulosa cells express integrin α6: possible involvement of integrin α6 on folliculogenesis." Hormone Research. (in press). (1996)
• [文献書誌] Honda T, et al.: "Integrin α6 is a differentiation antigen of human granulosa cell." Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. 2899-2905 (1995)
• [文献書誌] Imai K, et al.: "A mouse monoclonal antibody, S2n8, detects a 142kD protein on the surface of human endometrial stromal cells and decidual cells." Human Reproduction. 10. 1311-1318 (1995)
• [文献書誌] Fujiwara H, et al.: "A porcine homolog of human integrin α6 is a differentiation antigen o f granulosa cells." Biology of Reproduction. 53. 407-417 (1995)
• [文献書誌] Hattori N, et al.: "Human luteal cells express leukocyte functional antigen(LFA)-3." Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism. 80. 78-84 (1995)