研究概要 |
子宮筋腫細胞の増殖促進因子であるEGF-EGF受容体に性ステロイドがいかなる関わりを持つかを子宮筋腫細胞培養系を用いて検討したところ、E_2が子宮筋腫細胞のEGF受容体発現を、P_4がEGF蛋白発現をそれぞれ高めることが観察された。このことより、E_2とP_4がEGF-EGF受容体系に補完的、協調的に作用することが明かとなった。また、子宮筋腫細胞ではbcl-2蛋白の強い発現を認めるのに対し、正常子宮細胞ではその発現は極めて弱いことより、アポトーシス抑制機構の子宮筋腫発育への関与が示唆された。また、子宮筋腫細胞では分泌期にbcl-2蛋白発現が増強すること、さらに子宮筋腫細胞培養系でP_4がbcl-2蛋白発現を高めることから、P_4がbcl-2蛋白発現調節に重要な役割を担うことが明かとなった。 ブタ顆粒膜細胞培養系をモデルとしてTNFαとTGFβの顆粒膜細胞増殖能と内分泌機能ならびにアポトーシス発現に及ぼす影響を検討した.FSHとIGF-I添加で促進した増殖能とE_2分泌能はTNFαあるいはTGFβの同時添加で減少し,増殖能抑制は小卵胞で著明で,24時間のlag timeを要したのに対し,E_2分泌抑制は大卵胞と中卵胞で著明で,48時間のlag timeを要した.アポトーシスに特有なDNA断片化シグナルの発現はFSHとIGF-I添加で減少したが,TNFαあるいはTGFβの同時添加で著明に増加した.以上より,TNFαとTGFβは顆粒膜細胞増殖能と内分泌機能を抑制するが,その作用は卵胞発育に伴い増殖能抑制から分化機能抑制へと変化し,アポトーシス誘導因子として働くことが明らかとなった.
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