研究分担者 |
池田 勝久 東北大学, 医学部, 助教授 (70159614)
高坂 知節 東北大学, 医学部, 教授 (80004646)
高根 昭一 東北大学, 電気通信研究所, 助手 (90236240)
小澤 賢司 東北大学, 電気通信研究所, 助手 (30204192)
鈴木 陽一 東北大学, 電気通信研究所, 助教授 (20143034)
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研究概要 |
ディジタル補聴器への応用を重視し,本年度は,まず1マイクロホン型環境音抑圧手法について検討を行った.このような応用に適した手法として,音声のない区間から環境音のスペクトルを予測し,これをマイクロホンで観測される信号から引き去るものが広く知られている.この際に,入力された信号のスペクトルを計算することが必要となるが,従来はこれにフーリエ変換を用いている.しかし,これでは性能が不十分であり,信号音として音声を用いたとき,明瞭度がかえって劣化してしまうことが知られている.この問題を克服するために,ヒトの聴覚系内における信号処理をより良く反映していると思われるウェーブレット変換を用いることを着想した.さらに,ウェーブレット変換を行う際の基底となる基本ウェーブレットとして,音声の特徴を良く反映している減衰正弦波を用いることを提案した.また,従来用いられている基本フェーブレットとともに,抑圧性能を比較し,雑音中の音声をより良く強調できる可能性を示した.主観的にも検討を行い,フーリエ変換を用いた手法よりも音声の明瞭度が改善することが明らかとなった.これらの成果は,ノルウェーで開かれた国際会議や,国内の研究会などにおいて報告した. また,来年度に行う計画であった2マイクロホン型環境音抑圧について,信号処理アルゴリズムに関する見通しがたったため,先行して基礎的な検討に着手した.雑音中の音声について,この処理を計算機上で行った結果,従来の手法よりも環境音の抑圧性能が向上することが示された.この結果について,音響学会や電子情報通信学会の研究会などで報告した. 来年度は,2チャネルのマイクロホンを用いた環境音抑圧手法を実時間で動作させる信号処理システムを構築し,その性能を,物理的・主観的側面から検討する予定である.特に,難聴者を対象にした語音明瞭度の向上の度合の測定などを通して,実用化のための見通しを得る.
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