研究概要 |
常染色体遺伝の非症候群性感音難聴は,遺伝性難聴のうち最も患者数が多く,原因遺伝子も多いと考えられているが,現時点では1つも遺伝子が同定されていない。しかし最近欧米において,連鎖解析による非症候群性感音難聴の原因遺伝子マッピングが報告されている。本研究では常染色体優性遺伝の非症候群性感音難聴の1家系の協力を得て,連鎖解析によりその難聴原因遺伝子を第11染色体長腕の領域内にマッピングすることに成功した。この座位は優性遺伝子としては今までに報告がないが,劣性遺伝の非症候群性感音難聴のDFNB2遺伝子座がこの座にあることから,同じ遺伝子内の異なる変異が優性または劣性の難聴を引き起こしている可能性が推察された。 また,近年判明しているミトコンドリア遺伝子変異と,様々な感音難聴との関連を明らかにするために,1)感音難聴と糖尿病を示す1家系においてミトコンドリアDNA(mtDNA)3243位A→G点変異(以後3243変異)を同定し,この家系を含めて3243変異を伴う感音難聴症例9例において精密聴覚検査上の特徴を明らかにした。2)特発性両側性感音難聴及びその疑い症例7例中,1例においてmtDNA1555位A→G点変異(以後1555変異)を同定し,原因不明であった同疾患の病因関連遺伝子の1つである可能性を示した。3)母系遺伝の非症候群性感音難聴の2家系において,1555変異を両家系に同定し,1555変異以外の変異の難聴との関連性がないことを示し,母系遺伝の非症候群性感音難聴における1555変異の病因関連性を支持する証拠を得た。
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