研究概要 |
1.常染色体優性非症候群性感音難聴の1家系において,連鎖解析により第11染色体長腕に原因遺伝子座をマッピングした。これは優性遺伝としては新しい座位であり,DFNA11と命名された。またこの座位は,非症候群性感音難聴としては日本人家系で最初の同定となった。この領域は常染色体劣性非症候群性感音難聴の既知の遺伝子座(DFNB2)を含んでおり,同一遺伝子内の異なる変異が,優性および劣性遺伝形式の非症候群性感音難聴の原因となっている可能性が仮説として考えられる。またUsher症候群Ib型(USH1B)はDFNB2と同じ座位であるが,その原因遺伝子がミオシンVIIAであることが同定されたことから,前述の仮説に従えば,DFNA11もミオシンVIIAが原因遺伝子である可能性があり得る。 2.ミトコンドリアDNA3243変異を伴う9例について聴覚医学的特徴を明らかにした。 (1)オ-ジオグラムはほぼ対称性の感音難聴を示し,高音漸傾型が多く,進行例では水平型を示した.また難聴は緩徐に進行性であった. (2)内耳障害,後迷路障害の両者が関与しうる可能性が示唆された. (3)非MELAS群とMELAS群との間で,聴覚障害について明確な差異は見出されなかった. 3.ミトコンドリアDNA1555変異を伴うストマイ難聴の数家系を同定し,家系内にストマイ投与歴のない進行性感音難聴者が複数存在することを確認した。 4.難聴の家族歴のない特発性両側性感音難聴およびその疑い例7例中,1例において1555変異を同定し,原因不明であった同疾患の病因関連遺伝子の1つである可能性を示すとともに,家族歴がなくても原因不明の感音難聴に1555変異が関連しうることを示した。
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