研究概要 |
近年,培養細胞を用いた実験により、c-fos遺伝子は細胞内のカルシウムイオンやcyclic AMP濃度の上昇に伴ってリン酸化されたcyclic AMP-response element binding protein(CREB)が、プロモーターに存在するcydic AMP-response element(CRE)に結合することにより転写が誘導されることが明らかにされている。今回、ラットを用い網膜におけるCREBの局在および明暗環境の変化や外傷に伴うCREBのリン酸化の過程を検討することにより、網膜における転写制御の機序を明らかにすることを目的に実験し、以下の成績が得られた。 (1)抗CREB抗体を用いたWestern Blottingでは、CREB蛋白が網膜に存在し、その量は明暗刺激や網膜外傷、Bay K 8644の腹腔投与によって変化しないことが明らかになった。 (2)抗phospho Ser-133 CREB抗体を用いたWestern Blottingにより、網膜内のCREB蛋白が、明暗刺激や網膜外傷、カルシウムチャンネル活性薬であるBay K 8644の腹腔投与によってリン酸化されることが明らかになった。 これらの結果により明暗刺激や網膜外傷にともなう網膜内遺伝子の転写制御にCREBのリン酸化が関与していることが示唆された。また網膜内CREB蛋白のリン酸化に細胞内へのカルシウム流入が関与していることが示唆された。
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