研究課題
一般研究(B)
幼若な有色ラットの眼球から網膜色素上皮を分離し、アルビノラットの網膜下に移植した。当初は網膜色素上皮の分離に酵素を用いたが、酵素による細胞のダメ-ジが大きく酵素の使用は出来るだけ少なくし、主に機械的な分離法に変更した。機械的な分離法では網膜色素上皮をシート状に分離することは困難であったが移植に十分な大きさで分離することができた。網膜色素上皮を網膜下に移植するには経硝子体・経強膜の2つの方法があるがラットは水晶体が大きく硝子体手術が困難であるため、経強膜法を選択した。経強膜法では直視下に移植手術を行うことが困難であるが、網膜・血液関門を破壊しないため、拒絶反応に対しては有利な手術であると考えられる。分離された網膜色素細胞を経強膜的に移植する際、30ゲージの純針を用いていたが、網膜に対し、より安全で確実に移植するために硝子管によるマイクロピペットを作成、移植に用いた。マイクロピペットは網膜を傷害することが少なく、注入した網膜色素上皮細胞を含む懸濁液が眼外へ逆流することも少なかった。移植されたラットは約2週間から4週間後に潅流固定され、眼球を摘出し、組織学的検索を行った。摘出した眼球はパラフィンで固定・包埋され、ヘマトキシリン・エオジン染色により光顕的に観察した。2週間後の標本では移植された網膜色素上皮細胞を多数認めた。移植された細胞の周囲には炎症細胞と思われる細胞の浸潤を認めたが、明らかに拒絶反応と思われるような変化は認められなかった。しかし、移植4週間前後からは、移植された網膜色素細胞の明らかな減少を認め、マクロファージと思われる細胞の遊出を認め、拒絶反応が起きていると思われる。現在、ICAM1抗体、LFA1抗体、CCAM抗体などで移植前後の標本を免疫染色し、拒絶反応に関与していると思われる接着分子の確認を行っている。