研究概要 |
我々は、抗真菌剤であるフルコナゾール、あるいは抗炎症剤である副腎皮質ホルモンを含有させた生体分解性高分子からなる強膜プラグをそれぞれ作成し、その薬剤徐放性をin vitro,in vivoの両面から検討し、硝子体内薬物放出制御システムとしての有用性について考察した。 まずフルコナゾールについては、ポリ(乳酸-グリコール酸)共重合体(組成比率75:25,分子量121,000)を基材とし、フルコナゾールを10,20,30,50%含有させた強膜プラグを鋳型圧縮法にて作成した。in vitroでのフルコナゾール放出量を分光光度計で測定したところ、4週間にわたり薬物を徐放した。次に30%含有強膜プラグを家兎眼の毛様体扁平部に移植し、硝子体内薬物濃度を高速液体クロマトグラフィーで経時的に測定したところ、3週間にわたり治療有効濃度を維持した。 次に、副腎皮質ホルモンについては、ポリ(乳酸-グリコール酸)共重合体(組成比率85:15,分子量86,000)を基剤とし、副腎皮質ホルモンを10%、25%含有させた強膜プラグを同様に作成した。in vitroでの薬物放出量を高速液体クロマトグラフィーで測定したところ、2相性の放出曲線を示し、極早期での薬剤放出は制御された。強膜プラグを家兎眼に移植した後の硝子体内薬物濃度は、10%含有強膜プラグで2週間、25%含有強膜プラグでは4週間にわたって治療有効域に維持された。 両強膜プラグとも、眼内移植後の電気生理学的および組織学的検索で眼球組織に毒性は検出されなかった。また、強膜プラグ自体は薬物放出後眼内で自然に分解されるため摘出する必要がなく、生体適合性も良好で重篤な合併症は認めなかった。 以上より、生体分解性高分子強膜プラグに薬物を含有させることにより、薬物の放出を制御することが可能であった。生体内では、薬剤を長期間にわたり効率よく硝子体腔に徐放させることが出来、毒性も認められず、臨床応用可能な硝子体内薬物放出制御システムと考えられた。
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