1)至適冠灌流圧の決定 実験はすべて摘出灌流心で行うため、摘出心の至適冠灌流圧の決定が必要である。至適冠灌流圧は冠動脈血流のautoregurationが維持される範囲である。成熟心では冠灌流圧50mmHgから80mmHgの範囲で冠血流が11ml/min程度に保たれ、autoregiration指数も0から1の範囲であった。冠灌流圧が40mmHg以下或いは90mmHg以上では灌流圧の変化に応じて急激に冠血流量が変動し、かつautoregiration指数も0未満あるいは1以上となった。以上より家兎成熟心の摘出灌流心では至適冠灌流圧は50mmHgから80mmHgと考えられた。未熟心のautoregiration範囲は現在実験途上である。 2)虚血再灌流による細胞内Ca濃度の変化 成熟家兎の摘出灌流心(晶液質灌流)でCa感受性蛍光色素(Fura-2AM)を心筋細胞内に取り込ませた後、常温単純虚血30分を行った。細胞内Ca濃度は虚血後早期は徐々に上昇し、特に心周期の拡張期における細胞内カルシウム濃度の上昇が著しかった。しかし虚血開始20分頃より細胞内Ca濃度は低下しはじめ、再灌流直前には虚血前の拡張期とほぼ同程度となった。再灌流により細胞内Ca濃度は急激に上昇した。脱分極性心停止液をもちいて虚血心停止60分を行った場合、細胞内Ca濃度は速やかに低下し虚血前の拡張期位と同程度となった。以後Ca濃度は低下し、再灌流によって徐々に上昇した。以上より、成熟心では単純虚血でも心停止液による虚血でも細胞内Ca排出機構が保たれていると推察されたが、実験回数を重ねる必要がある。未熟心での測定はまだ行っていない。
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