実験では成熟心として生後20〜30週の家兎心、未熟心として生後4〜5の家兎心を用いた。 1.未熟心の冠循環特性 冠循環特性の一つである冠血流自動調節能を調べ、成熟心と比較した。 (方法)血液交叉灌流法で摘出心をLangendorff法で灌流した。灌流圧を100mmHg〜10mmHgまで10mmHg毎に変化させ、各灌流圧での冠血流量を測定し、各圧変化における自動調節能指数を算出した。 (結果)成熟心では冠灌流圧30mmHgから90mmHgにおいて冠血流自動調節能を示した。これに対し、未熟心ではいづれの冠灌圧においても冠血流自動調節は示さなかった。 (結論)未熟心は冠血流自動調節能が未熟であると思われる。 2、未熟心における虚血再灌流障害の発生 血液灌流心において心虚血再灌流による心機能障害および冠予備能障害の経時的推移を測定し、脱分極性心筋保護液の効果について検討した。 (方法)血液叉灌流法で摘出心をLangendorff法で灌流した。常温(37℃)虚血25分とした後再灌流し、虚血全から再灌流90分後までの心機能及び冠予備能を30分毎に計測した。左室バルーンを挿入し左室圧を心機能の指標とした。アセチルコリン3μg冠注時の血流増加度を冠予備能の指標とした。虚血前の左室圧を100%とし、虚血再灌流後の心機能は回復度(%recovery)で評価した。 対象を2群に分け脱分極性心筋保護液使用下の虚血としたものをCP(+)群(n=4)、単純虚血としたものをCP(-)群(n=4)とした。 (結果)(1)虚血再灌流後の心機能はCP(+)群でCP(-)群より良好な傾向を示したが有意差はなかった。(2)冠血管予備能でもCP(-)群とCP(+)群とを比較するとCP(+)群で良好な傾向があったが有意差は認めなかった。 (考察)脱分極性心筋保護液は心機能・冠予備能保護の面であきらかな効果はないと示唆された。
|