研究概要 |
歯周ポケットから高頻度に分離される糖非分解性のグラム陽性桿菌には、培養が困難であったため、従来検出されることなく、従って無視されていた菌種が多く、その多くは新種であると考えられる。このうち、成人性歯周病患者から比較的高頻度で検出され、しかも患者間のばらつきが余り無い、糖非分解性の分離菌の1群を、Eubacterium saphenumと命名(IJEB, 43 : 302-304, 1993)し、その他の糖非分解性のグラム陽性桿菌との比較を、細菌学的、生化学的性状検査、DNA相同性、あるいは菌体タンパク質のSDS-PAGE分析等の分類基準を新しく設定して行い、2新種を報告し、4新種の提案を準備している。また、その液性免疫に与える影響を調べた。 これらの菌種は培養が極めて難しく、同種の分離に成功しているのは、英米の2研究施設のみで、分離率は我々よりも低いのが現状であり、その研究の促進のために菌体の大量蓄積を行い、内外の研究機関からの供給依頼にも応えた。 ELISA法により、この菌種の超音波破砕菌体を被験抗原として、成人性歯周疾患患者20人から採取した血清中の、この菌種に対する抗体を検索したところ、いずれの患者からも、健康人(成人性歯周炎非罹患者)よりも高い抗体価が検出され、歯周疾患との関連が示唆された。
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