研究概要 |
口腔扁平上皮癌におけるEBウイルスおよびヒトパピローマウイルスとp53との関連性について検索を行った。p53遺伝子exon5から8までの突然変異をPCR-SSCP法にて検討した結果、扁平上皮癌47例中、p53遺伝子変異を20例(42.6%)に認めた。EBウイルスについては、Bam HI-W部のSouthern blot検索により、口腔扁平上皮癌47例中、7例(14.9%)にEBV-DNAを認めた。潜在EBV遺伝子産物の一つであるLMP-1を免疫組織化学染色により検索した結果、Southern blot法により確認された症例全てがLMP-1陽性を示し、その分布は腫瘍胞巣周辺の癌細胞膜上にみられ、癌胞巣の増殖・分化に影響を与えているものと推察された。p53とEBVに関連した局所再発、転移および生存率の予後については有意な差を認めなかった。従って、口腔扁平上皮癌ではp53遺伝子の構造的変化よりも、EBウイルス蛋白との複合体形成によるp53失活が起こっている可能性が高いと考えらた。 扁平上皮癌47例のうち31例(66%)にHPV16あるいは18の感染を認め、さらにHPV陽性例とp53遺伝子の点突然変異の間に有意に関連性があることが示され、HPV感染がp53遺伝子の変異に関与していることが示唆された。HPV陽性例ではリンパ節転移例が有意に多く、癌の進展にもHPVが関与していることが示唆された。 胃癌におけるカテプシンDおよびEの局在を免疫組織化学的に検索し、これらの酵素の癌細胞における局在様式が癌の局所浸潤およびリンパ節への転移と密接な関連性があることを示し、論文に発表した。 乳癌におけるカテプシンD、EGF-receptor、PCNAについて免疫組織化学的に検索した結果、カテプシンDとEGF-receptor陽性率が、リンパ節転移や予後と相関性を示し、これらの蛋白が乳癌組織の増殖や進展に関与していることを示した。 大腸腺癌における基底膜成分の局在様式をlaminin,type IV collagen,heparan sulphate proteoglycanの各基底膜成分に対する抗体を用いて免疫組織学的に検索し、癌組織の浸潤先端部の組織像と基底膜成分の局在に有意な差がみられ、またこれらはリンパ節転移とも有意に関連していたことより、基底膜成分の局在が大腸癌の増殖や進展に関与していることを示した。
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