研究課題/領域番号 |
07457436
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
機能系基礎歯科学
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松本 章 北海道大学, 歯学部, 教授 (40064365)
|
研究分担者 |
吉村 善隆 北海道大学, 歯学部, 助手 (30230816)
鈴木 邦明 北海道大学, 歯学部, 助教授 (40133748)
|
研究期間 (年度) |
1995 – 1997
|
キーワード | 転写因子 / NF-κB / 骨芽細胞様MC3T3-E1細胞 / チロシンキナーゼ / 低カルシウム環境 / ゲルシフト分析 |
研究概要 |
我々は歯周病の歯槽骨崩壊の予防・診断・治療を遺伝子レベルで行うべく研究を進めている。我々はこの歯槽骨崩壊がin vivoの実験で器官、細胞の環境が低Ca状態に陥ると発症することに着目し、この点を確かめるために、in vitro実験に移った。 生後1日齢のラットの低Ca培養液培養大腿骨において、全長の増大、骨頭部の肥大、アルカリ性ホスファターゼ活性の亢進、コラーゲン合成の減退など異常の発生していることを認めた。同様に低Ca培養液で培養したラット胎生頭蓋冠由来の骨形成系細胞ではアルカリ性ホスファターゼ亢進については骨形成系細胞においても初期に亢進し、後期の石灰化期以後は抑制されていることを認めた。更に細胞内情報伝達系にも影響が及び、低Ca培養液で培養した骨形成系細胞では総Ca量は減少し、IP3量も減少し、PKC活性も減退していることを認めた。次に核内遺伝子の機能にも異常が生じており、細胞の成長、発育に機能しているc-fos遺伝子の発現はMC3T3-E1細胞をFBS、EGFで刺激すると、c-fos mRNA発現の程度が上昇していることが示され、遺伝子の機能にも変化の生じていることが見出された。このように低Ca環境が遺伝子機能にまで影響していることが示されたので我々はこの遺伝子の機能のDNA情報をmRNAに伝達するときに働く遺伝子転写調節因子のプロモーター、エンハンサー領域における調節機構を調べることが重要であると考えた。遺伝子転写因子には多数のものがあるが、我々は哺乳類一般の細胞にみられるNF-κB、cyclicAMP依存性のAkinaseに関わるCREB、サイトカインの制御に参加しているOct-1について、低Ca培養液で培養してMC3T3-E1細胞についてGel Shift Assayで調べた。その結果、次の事実が平成7-9年度文部省科学研究費補助金により行われた研究で見出された。 1.EGF刺激低Ca環境培養MC3T3-E1細胞におけるc-fos mRNA発現の増強はゲニステイン(チロシンキナーゼ活性阻害剤)で抑制され、チロシンキナーゼ活性の関与が示唆された。 2.骨芽細胞様MC3T3-E1細胞にNF-κB、CREB、Oct-1の遺伝子転写調節因子が認められた。 3.低Ca環境下培養骨芽細胞様MC3T3-E1細胞の1)増殖期(3日間培養)CREBに異常がある。NF-κB活性が低下し、Oct-1には活性度に変化がありそうである。2)分化期(17日間培養)CREBに異常がある。NF-κB活性が低下し、Oct-1にも変化がありそうである。3)石灰化期(30日間培養)CREBのバンドの位置に差異が見られ、DNA-蛋白質複合体の構造に変化の生じていることが示唆された。NF-κBきのDNA結合活性が低下する傾向が示された。Oct-1も活性が低下していた。 以上のように平成7-9年度においては確かに低Ca環境下培養骨芽細胞様MC3T3-E1細胞の核内遺伝子転写因子の機能に異常の発生していることが見出された。特にCREBのバンドにシフトが見られ、確かにその機能に変化の生じていることが見出された。NF-κBのDNA結合活性も低下し、Oct-1にも何等かの機能変化の生じていることも窺えた。低Ca環境は骨芽細胞にとって正常の機能を維持するうえで不適切な環境なので、このように遺伝子転写調節領域においても対応、変化の生じていることが考えられる。 今後は、この遺伝子転写調節因子の機能異常のメカニズムを解明するために、curcurin(NF-κB阻害剤)などを用いてNF-κBの挙動をみたり、これらの転写調節因子の抗体を用いて免疫沈降を行い、Western Blot Analysisを行って、それらの因子が確実に作動していることを確かめることが必要である。また、我々が見出したFBS、EGF刺激後のc-fos mRNA発現の増強と、これら遺伝子転写調節因子との関連を調べることがその現象解折の上で重要である。
|