研究概要 |
BMP(骨形成蛋白質)による異所性の軟骨・骨誘導がその担体によって大きく左右されることを認識して後、その担体の諸性質の中でとくに幾何学的要素を明確にするため本年度は、ヒドロキシアパタイト担体に集中した。先ず、多孔性と充実性のヒドロキシアパタイト焼結体とを比較したところ、気孔がないと全く骨も軟骨も誘導されないことを見いだした。その理由は血管が進入し難いためと推測され、気孔の重要性が再確認された。そこで気孔径のみが異なる5種類(100-200,200-300,300-400,400-500,および500-600μm)のブロック体を作製した。これらの担体にリコンビナントBMP2を複合して比較した。即ち、摘出物中のオステオカルシン、およびアルカリフォスファターゼ活性を定量すると共に、組織学的に比較観察した結果、300-400μmの担体が最も効率よく骨を作ることを発見した。この範囲の気孔径(300-400μm)の値から離れるほど、両指標の値が低下していくことがわかった。さらに興味深いことには形態学的観察において、500μmまでの気孔径では、気孔の内壁に沿った骨形成が行われるのに対して、500μm以上の気孔径では内壁性の骨形成は不完全となり、気孔の中心部への骨形成が観察されるようになったことである。以上の結果は、明らかに血管形成に適した立体構造に関与するものであり、その意味で血管確保構造と呼ぶことが出来る。アパタイトを材質とした骨形成用の細胞支持体において骨形成に最適の気孔径が存在してそれが300-400μmであることを世界で初めて示したものである。このような最適気孔径の発見は、ヒドロキシアパタイト以外の素材でも材質による修正を加えることで適用できると考えられる。この意味で最適気孔径の発見は今後の人工臓器開発の上できわめて有用な概念を提供するものである。
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