研究目的 延随の外側網様体には顎口腔の自律機能や運動機能に関与する神経細胞集団がある。すなわち、自律神経機能では唾液分泌神経や血管運動神経が、また運動機能では顎舌運動神経のプレモトニューロンが存在する。これら異なる機能の神経細胞は延随外側網様体に混在しており、外側網様体が自律機能と運動機能の統合的役割を果たしている可能性が高い。そこで平成7年度は、(1)新鮮脳薄切標本を用いて電気生理学的手技により外側網様体の性質を分析した。舌の血流と唾液分泌に関与する外側網様体細胞を個別にマ-キングし、それぞれの細胞の性質を調べた。これに並行して、(2)顎運動、舌運動、唾液分泌、血流変化の相互関連を行動学的に分析した。慢性的に唾液分泌や口顎の筋電図を測定し、顎舌運動に対して唾液分泌がどの様なタイミングで誘発されるかを中心に分析した。 研究成果 (1)生後4-5日目のラットの舌または鼓索神経にロ-ダミンを注入し上唾液核細胞を標識した。新鮮脳薄切標本上で、標識した細胞の活動をホールセルパッチクランプ法で解析した。その結果、顎舌腺舌下腺に分布する唾液核細胞はA-currentが著明で閾値が高いが、舌の血管を支配する唾液核細胞はA-currentが弱く閾値が低い細胞であった。 (2)測定箱内で摂食摂水するように訓練したラットを用いて、唾液分泌量と口顎の筋電図活動を記録した。その結果、顎舌の運動と唾液分泌の間には高い相関関係があることが分かったが、より詳細に咀嚼力と分泌活動の関連や満腹状態と唾液分泌量との関連などを今後調べる必要がある。
|