研究目的:延髄の外側網様体には顎口腔の自律機能や運動機能に関与する神経細胞集団がある。すなわち、自律神経機能では唾液分泌神経や血管運動神経が、また運動機能では顎舌運動神経のプレモトニューロンが存在する。これら異なる機能の神経細胞は延髄外側網様体に混在しており、外側網様体が自律機能と運動機能の統合的役割を果たしている可能性が高い。そこで、(1)新鮮脳薄切標本を用いて電気生理学的手技により外側網様体の性質を分析した。舌の血流と唾液分泌に関与する外側網様体細胞を個別にマ-キングし、それぞれの細胞の性質を調べた。これに並行して、(2)顎運動、舌運動、唾液分泌、血流変化の相互関連を行動学的に分析した。すなわち、飲水行動時や摂食行動時の唾液分泌と口顎の筋電図を慢性的に同時記録し、顎舌運動と唾液分泌の経時的変化と味覚感受性の変化を分析した。 研究成果:1.生後4-5日のラットの舌または鼓索神経にロ-ダミンを注入し上唾液核細胞を標識し、新鮮脳薄切標本上で、標識した細胞の活動をホールセルパッチクランプ法で解析した。その結果、顎下腺舌下腺に分布する唾液核細胞は外向き電流(A-current)が著明であり約30Hzの低頻度で発火したが、舌の血管を支配する唾液核細胞はA-currentの時間経過が短く約70Hzの高頻度で発火した。 2.測定箱内で摂食摂水するように訓練したラットを用いて、唾液分泌量と口顎の筋電図活動を記録した。その血管、顎舌の運動と唾液分泌の間には相関関係があるものの唾液分泌は視床下部外側野などの上位中枢から制御作用を大きく受けていることが分かった。また、唾液分泌量が変化すると、飼料の摂取パターン(顎舌の運動様式)や味覚の感受性が著しく変化することが分かった。
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