研究概要 |
本年度は、前年度により同定した視床TPN分布領域に順行性トレーサーであるPhaseolus vulgaris-leucoagglutinin(PHA-L)を微量注入し、視床ニューロン軸索の大脳皮質第一次体性感覚野への投射様式を詳細に検索した。実験には、ケタラール(50mg/kg,i.m.)およびハロ-セン(2-3%)で麻酔した成ネコを用いた。PHA-L注入に先立ち、視床内における歯髄感覚入力投射部位を同定するため、片側の上下顎犬歯歯髄を電気刺激し、multiple unit活動を記録した。視床TPN活動が多数記録された部位を同定後、その中心部にハミルトンシリンジの先端にガラス管を装着した微小ピペットを用い、PHA-Lを微量注入(0.04-0.08μl)した。動物を2週間生存させた後にネンブタールで深く麻酔し、4%パラフォルムアルデヒドにて灌流固定し、厚さ50μmの連続前額断組織標本を作製する。各組織切片をgoat anti-PHA-Lにincubateし、ABC法(Vector Lab.)により反応させ、DAB(3,3'-diaminobenzidine-tetra HCl)によりPHA-L陽性軸索を発色した。PHA-L陽性軸索は、前年度の実験で明らかになった領域、すなわち大脳皮質第一次体性感覚野の顔面口腔領に多数見い出された。また、これらのPHA-L陽性軸索は大脳皮質内においてクラスターを成して分布していた。しかしこのクラスターは、皮質刺激に対する逆方向性応答を指標に調べた実験により同定されたクラスターより空間的に広い分布を成していた。また、皮質内においては、第III層および第V層を中心に分布していた。以上の結果から、個々の視床歯髄駆動ニューロンはPHA-Lトレース実験で得たよりも小さなクラスターを有する可能性が示唆された。
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