研究概要 |
前年度、我々は7週令モルモットを用いて、その前歯に咬合挙上板を7日間装着すると、咬筋のミオシンアイソフォームがFM1タイプ(タイプIIB)からFM3タイプ(タイプIIA)優位の筋線維に変化することをピロリン酸電気泳動法により観察した。今回この変化が1)短縮速度の変化に反映されるのかどうか、in vitro motility assay系を用いて解析すると共に、2)ミオシンATPase活性の変化と対応するかどうか検討した。咬筋、側頭筋および顎二腹筋よりミオシンを抽出し、これらのミオシンをそれぞれニトロセルロース膜上に付着させ、このミオシン上でのアクチンフィラメント(ファロイジン-ロダミンで蛍光ラベル)の滑走状態を蛍光顕微鏡下で観察し、そのビデオ画像よりアクチンフィラメント滑り速度を解析した。その結果、滑り速度は咬合挙上により、咬筋では4.0【.+-。】0.3から3.4【.+-。】0.3μm/s(mean【.+-。】SD,n=5)へ、側頭筋では4.6【.+-。】0.1から3.8【.+-。】0.3μm/s(n=5)へ、顎二腹筋では2.9【.+-。】0.2から2.5【.+-。】0.3μm/s(n=5)へと有意(P<0.01〜0.05)に減少した。ミオシンATPase活性も咬合挙上により、咬筋では1.00【.+-。】0.11から0.70【.+-。】0.12μmol Pi/mg/min(mean【.+-。】SD,n=5)へ、側頭筋では1.18【.+-。】0.15から0.77【.+-。】0.08μmol Pi/mg/min(n=5)へ、顎二腹筋では0.84【.+-。】0.04から0.56【.+-。】0.05μmol Pi/mg/min(n=5)へと有意(P<0.01)に減少した。 これらの結果は、前年度に報告した咬合挙上によるミオシンアイソフォームの変化から期待される推察とも大変よく一致し、咀嚼筋は咬合挙上によって、より収縮速度の遅い筋線維へと変化することを示唆する。
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