研究概要 |
既に、我々は7週令モルモットを用いて、その下顎切歯に咬合挙上板を7日間装着すると、1)咬筋のTension cost(ATPase活性/発生張力)が著しく低下すること(Paik et al.,Am.J.Orthod.Dentofac.Orthop.1993;104:483-491)、2)咬筋のミオシンアイソフォームがFM1タイプからFM3タイプ優位に変化すること(Saeki et al.,Brain and Oral Functions.1995;435-438)、3)咬筋のミオシンとアクチンの滑り速度(in vitro motility assay系)ならびにミオシンATPase活性が有意に減少すること(Kawasaki et al.,Archs oral Biol.1997;42:505-512)を観察した。今回、電気泳動法(SDS-ポリアクルアミドゲル電気泳動、及び二次元電気泳動)を用いて、咬合挙上が、咬筋におけるミオシン重鎖、ミオシン軽鎖、トロポミオシンの発現に与える影響をタンパク質レベルで解析した。その結果、ミオシン重鎖アイソフォームの構成比(MHC IIa及びMHC IIdの相対量)に変化は見られなかったが、ミオシン軽鎖においてLC1f/LC3f比の有意な増加(LC1f相対量の増加、及びLC3f相対量の減少)、トロポミオシンにおいてTM-β/TM-α比の有意な増加(TM-β相対量の増加、及びTM-α相対量の減少)が観察された。これらの結果は、上記の1)2)3)の結果を統一的に支持するものであった。 更に、実験動物として遺伝情報の豊富なラット(将来、筋タンパク質の発現変化をmRNAレベルで解析するため)を用いて、咬合挙上が咬筋に与える影響を検討した。7週令のラットに7日間の咬合挙上を施すと、モルモットの場合と同様に、1)咬筋のミオシンとアクチンの滑り速度(in vitro motility assay系)ならびにミオシンATPase活性が有意に減少すること、2)ミオシン軽鎖においてLC1f/LC3f比が有意に増加(LC1f相対量の増加、及びLC3f相対量の減少)することを観察した。
|