歯周炎罹患歯肉組織中に浸潤しているT細胞の特性を解明する一環として逆転写PCR法を用いて歯周炎非罹患組織と同一患者の末梢血のTCR Vβレパトアについて比較した。歯周炎罹患部位の歯肉組織は歯周外科処置等に採取し、また同時に末梢血も採取し単核細胞画分を得た。これらの組織および細胞からAGPC法を用いてRNAを抽出し、random hexamerとM-MLV逆転写酵素でcDNAを合成した後、TCR Vβレパトアを解析するために20種類のVβプライマーと1種類のCβプライマーを用いてPCRを行い、産物をアガロースゲル電気泳動後各レパトアの発現率を画像解析にて分析した。その結果、末梢血のTCRレパトアは患者間で類似したパターンを示したが、その中でもVβ5.1、Vβ5.2-3、Vβ6、Vβ7、Vβ8、Vβ13.2-3、Vβ14遺伝子の使用頻度が高かった。歯周炎罹患組織における発現パターンは個人差が比較的大きかったものの末梢血のそれと類似しており、これらの遺伝子ファミリーは歯周炎組織においても高い発現頻度を示したものがみられ、特にVβ6は歯周炎組織において末梢血と比較して有意に高い発現頻度を示した。一方Vβ16では逆に歯周炎病変部で末梢血よりも発現が有意に低下していた。これらのことから歯周炎罹患組織におけるTCRレパトアは末梢血のそれと比較して個人差が大きかったことから抗原認識に違いがあり、歯周炎局所において特定のTCRVβを発現する細胞のenrichmentあるいはdepletionが生じていることが示唆された。
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