研究概要 |
平成8年度は新たな歯周炎患者29名(若年性歯周炎患者5名,急速進行性歯周炎患者10名,成人性歯周炎患者14名)について検討した。ヒト歯肉線維芽細胞を抗原として認識するIgG抗体は多くの歯周病患者に検出された。患者が認識するヒト歯肉線維芽細胞抗原は患者によって異なっていた。患者IgG抗体が認識する抗原バンドの数は1本から数本であった。歯周病の病型によって抗ヒト歯肉線維芽細胞抗体の存在の有無,認識する抗原の種類に差はなかった。また,患者のHLA classII抗原の遺伝子型と認識抗原との間に関係は見出せなかった。 歯周病関連細菌とヒト歯肉線維芽細胞の共通抗原性は,17種の歯周病関連細菌を抗原として調製したウサギ抗血清とヒト歯肉線維芽細胞抗原との反応によって調べた。無感作ウサギ血清もヒト歯肉線維芽細胞抗原と反応したが,抗歯周病関連細菌ウサギ血清が特異的に反応する抗原は別に存在した。約55kDaの抗原に対して多くの抗歯周病関連細菌ウサギ血清が反応した。この抗原は歯周病患者血清IgGが認識する約55kDaのヒト歯肉線維芽細胞抗原と分子量が一致した。抗Camplyobacter rectus抗体は約35kDaのヒト歯肉線維芽細胞抗原と強く反応したが,この35kDa抗原も多くの歯周病患者血清IgGによって認識された。歯周病関連細菌抗原とヒト歯肉線維芽細胞抗原に複数の共通した抗原の存在し,いずれの抗原も歯周病患者血清-IgGによって認識されている可能性がある。 歯周病患者の体液性免疫応答の特殊性を産生IgG抗体のサブクラスの偏りから検討した。歯周病患者の歯周病関連細菌抗原に対する抗体はIgG2が多くかった。また,精製したFusobacteriumu nucleatum由来の赤血球凝集素に対する特異抗体も歯周病患者ではIgG2が多く産生されており,健常者のそれとは異なっていた。
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