研究概要 |
ラットのニフェジピン歯肉増殖症の発症機序におけるアポトーシスの意義を検討するため、アポトーシスの関連マーカーと考えられているトランスグルタミナーゼ(TG)の活性を種々の実験系で測定し、以下の結果を得た。 (1)TG活性のラット歯肉中での存在、その活性量、細胞内局在を明らかにするため、20日齢ラット歯肉のTotal homogenateを遠心し、核、膜、ミクロゾーム、サイトゾル成分を分画し、それぞれに含まれるTG活性を測定した。併せて、同様に肝臓から調製された成分の活性も測定し、歯肉と比較した。その結果、歯肉のTotal homogenate、核、膜画分中の活性は、肝臓にくらべ約4-6倍高いこと、歯肉ではミクロゾーム及びサイトゾル画分は他の画分に比べ約33%であるのに対し、肝臓では膜およびサイトゾル画分にその活性の大半が含まれていることが明らかとなった。 (2)20日齢ラット歯肉のTG活性(Total homogenate)の日齢による変化を調べたところ、40日齢(20日齢の約50%)まで経時的に下降し、そのレベルで70日齢まで維持されることが明らかとなった。 (3)20日齢ラットにニフェジピン含有飼料を与え10日間飼育したところ、歯肉TG活性は対照ラットの約50%となることが明らかとなった。 TGがカルシウム依存性の酵素であることをふまえて考察すると、上記の結果から、カルシウム拮抗薬であるニフェジピンが歯肉組織中TGの活性化を抑制することによって、アポトーシスのサイクルを遅延させた結果、歯肉に増殖症を発症させる可能性が示唆された(Nishikawa et al. J Periodontol, in press)。また、ラットにおいて歯肉のみに増殖が生じること、日齢の高いラットではニフェジピンによって歯肉に増殖が生じないという事実(Ishida et al. J Periodontol, 66:345-350,1995)は、歯肉のTG活性が、活性の高いとされる肝臓よりもさらに約4-6倍高いこと、日齢とともにTG活性が低下するという結果で説明されることが示唆された。
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