研究概要 |
一般的に、増殖症はその組織の細胞数の著しい増加を伴うが、これらは細胞増殖の促進と細胞死の抑制との両方の機構により制御されていることが最近、示唆されている。これまで多くの報告がニフェジピンの直接的な歯肉細胞の増殖促進効果を否定していることから(Nishikawa S et al.J Periodontol 62:30-35,1991)、本疾患は、ニフェジピンが歯肉を構成する細胞のアポトーシスに何らかの影響を与えた結果、発現する可能性が示唆される。そこで、本研究では、1993年に(Morisaki I et al.Jperiodontol,28.396-403,1993)に我々が確立したニフェジピンによる歯肉増殖症のラットモデルを用い、1)歯肉組織中の、アポトーシスの代表的指標とされるトランスグルタミナーゼ(TG)(EC2.3.2.13)活性2)歯肉組織中のアポトーシス関連タンパク(増殖核抗原など)の発現およびDNAの分解が、薬剤投与によって、どのように変化するかを検索し、ニフェジピン歯肉増殖症とアポトーシスとの関連を検討した。その結果、ニフェジピン投与によって歯肉組織中のTG活性だけでなく、歯肉上皮のアポトーシス陽性細胞数(TUNEL陽性でかつPCNA陰性の細胞の数)も減少することが明らかとなった。アポトーシスの一連の過程に関与する酵素の多くが(エンドヌクレアーゼやTG)、カルシウム依存性の酵素であることをふまえて考察すると、本実験結果から、Ca^<2+>チャンネルブロッカーであるニフェジピンが歯肉組織中の両酵素の活性化を抑制することによって、アポトーシスのサイクルを遅延させた結果、歯肉に増殖症を惹起させる可能性が示唆された。
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