研究概要 |
レーザー照射による歯髄の硬組織形成促進機構を解明する目的で今年度はin vitro実験系で以下の研究を行った。 Bone nodule形成の観察:20から30歳の健全な患者から矯正治療の目的で抜去された上顎第1小臼歯からout growthさせて得た。レーザー照射群とレーザー未照射群を3週間まで観察したが、レーザー照射群、未照射群共にbone nodule形成の確認はできなかった。 そこで、硬組織形成に関与するアルカリフォスファターゼ(ALP)、オステオポンチン(OsP)、オステオカルシン(OsC)、骨形成誘導タンパク(BMP-2)およびコラーゲンIの遺伝子発現をPCR法で観察した。レーザーの照射時間(照射出力:500mW)0,1,5,10,20分間、RNAの抽出時期は照射後の3、24時間および2週間後に行った。なお培養液中にはアスコルビン酸、デキサメタゾン、βグリセロリン酸を添加した。その結果、レーザー1分照射の2週間後に抽出したBMP-2が明らかにmRNA発現の増強が見られた。5分照射2週間後の抽出においては1分照射に比べやや減少していた。AlpおよびOsPについては照射群、未照射群ともに検出できなかった。OsCおよびtypeI collagenはmRNAの発現は見られたが、レーザー照射による変化は確認できなかった。 今回のin vitro実験系ではレーザー照射による明らかなbone nodule形成の動きは見られなかったが、遺伝子発現レベルの観察ではcollagen、OsCの発現は照射と未照射の間に変化は見られないが、骨芽細胞において骨形成に深く関与するBMP-2の遺伝子発現が、レーザ照射群に明らかな増強が見られたことは、レーザー照射が歯髄細胞の硬組織形成能に影響を与えていると示唆される。乳歯から得られた培養細胞においてVD3を添加するとbone nodule形成が見られるという報告から。今後、乳歯についても検討を加え、また、硬組織形成に影響を与える細胞外マトリックス代謝に与える影響についても検討する必要がある。
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