研究概要 |
歯硬組織への接着をグラフト重合によって実現することを目指して,(1)N-フェニルグリシン(NPG)-各種の第二鉄化合物開始剤系によるMMAのヒト歯象牙質へのグラフト重合性(平成8年,秋期日本歯科理工学会), (2) NPG-各種の第二鉄化合物開始剤系のコラーゲンへのグラフト重合性(1997年,IADR)を調べた. (1)項に関しては,NPG-各種の第二鉄化合物開始剤系を用いて,モノマー組成をMMA/HEMA (weight ratio) =10/0, 8/2, 6/4, 4/6, 2/8, 1/10と変化させ,ヒト象牙質共存下で37℃で1時間反応させた.それらの生成物をアセトンおよびアセトン/水の混合液でソックスレ-抽出した後の象牙質デスクのグラフト重合性をFTIR-顕微反射法で調べた.いずれのNPG-第二鉄化合物を用いた場合にも,象牙質表面には,これらのモノマーに由来するエステル(C=O at 1735cm-1)の存在は認められなかった. (2)項については,NPG-各種の第二鉄化合物開始剤系を用いて,モノマーとしてMMAの水溶液重合をコラーゲンタイプI (Sigma)の共存下で37℃で反応させた.リン酸第二鉄,クエン酸第二鉄とNPGの開始剤系は反応時間1時間で高重合率に達した.それ以外のNPG-各種の第二鉄化合物に対する重合率は時間の延長と共に次第に増加した.NPG-各種の第二鉄化合物開始剤系を用いたMMAのグラフト重合は20〜30%のグラフト率に達した.また,それらのグラフト効率は2〜4%であった.
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