研究概要 |
(AuCu)_<1-X>Pt_X擬2元系合金(X=0.0026,0.0051,0.0076,0.0097.0.0135.0.0248,0.0469,0.0692)の時効硬化特性に関係する相変態プロセスを電気抵抗測定、硬さ特性、X線回折、電子顕微鏡直接観察、制限視野電子回折法により検討した。この合金系の硬化特性はPt濃度、時効温度および時間によって変化することを明らかにした上で、硬化の特徴と原因となった相変態のメカニズムによって次の3つに分類した。1)AuCuI規則格子変態によって導入される整合ひずみ場による比較的急激な硬化とその後に進行する双晶化によってひずみ場が解放するために生ずる軟化をO-Tプロセス、2)時効初期には正方晶化により急激な硬化の後、長周期逆位相境界構造の発達にともなって生ずる比較的ゆるやかな硬化をLPAPBプロセス、3)AuCuI+α(fcc不規則固溶相)2相共存によって形成されるチャッカーボード様組織の形成によって生ずる硬化をT-Wプロセス。これらの結果は1994年に発表した(AuCu)_<1-X>Pt_X擬2元系コヒーレント状態図および1995年に発表したチャッカーボード様組織の形成過程および結晶構造の解析結果を参照した解釈した。この結果はMaterials Science and Engineering A206(1996)290-301に発表した。O-TプロセスおよびLPAPBプロセスによる硬化については従来からの研究により明らかにされているので、T-Wプロセスによる相変態過程を暗視野法による通常の電子顕微鏡観察および高分解能電子顕微鏡観察を行った。その結果、共存するAuCuI相とα相との界面は整合性が保たれており、AuCuI相を取り囲むα相がAuCuI相の正方晶化により導入された内部のひずみを緩和するバッファの役目をしていることが明らかとなった。AuCuI相の正方晶化のみで硬化するO-Tプロセスでは、AuCuI相の正方晶化によって導入された内部ひずみが緩和される過程で合金が変形する可能性があるが、T-Wプロセスによる硬化ではそのような変形はないと予想された。
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