研究概要 |
1.正常有歯顎者4名について「桜の花が咲きました」の発音中の解析を行った。 2.鼻下点,上口唇,左右モダイオラス,下口唇,オトガイおよび切歯点として下顎前歯部からワイヤーを口腔外に延長し,標点を貼布した.また,鼻根,鼻尖,左右頬骨部に頭部の回転補正および,カンベル平面を基準とするための標点を設けた. 3.記録解析方法:被験者の中心咬合位と安静位および被験音調音中の顔貌を,4台の高速度カメラで4方向から撮影すると同時に音声をマイクから入力し,データステーション(V. ICON370 Data Station OXFORD METRICS社製)へ映像データおよび音声データとして収集する。収集したデータは,リアルタイムでワークステーション(PS/V Model 2411 IBM社製)へ転送し,両者を同時に記録した. 音声のアナログデータからのTime-Waveと,同時録音のデジタルオ-デオテープの出力をDSP Sona-Graph 5500 (KAY社製)に導入して得られたソナグラムを対比し、各音の発音区域を規定できた. 4.結果と考察:4名の被験者の「桜の花が咲きました」発音中の全運動経路の解析では,被験者間で運動範囲や運動奇跡の差が認められた.たとえば切歯点の前頭面投影では,被験者1,2では運動範囲が小さく,被験者3.4では大きい.特に被験者4では左右方向の範囲が大きく非典型的なパターンと思われる. 計測対象を4方向から記録したため、死角が生じずにモダイオラスなど矢状面以外の測定点の立体的な運動を観察できた。これによって[s],[ ],[m]などの子音発音中の運動経路を,より正確に解析することが可能になった.このような発音中の3次元運動経路の動態を観察することにより,発音機能評価へ応用できることが示唆された.
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