口腔癌ならびに難治性感染症患者の末梢血好中球活性酸素産生能に関しては、当診療科で加療した口腔癌患者、顎骨骨髄炎患者に研究協力の同意を得、以下の研究を施行した。入院時、手術前後に末梢静脈血から好中球浮遊液を作成し、血清オプソナイズザイモザン刺激による好中球O_2・-産生能をウミホタル・ルシフェリン誘導体(CLA)を発光試薬とする化学発光法を用い測定した。化学発光の測定は当教室既設のルミネッセンスリーダー(アロカ社製BLR301)を用い、発光曲線を記録し最大発光強度値をO_2・-産生能としたが、極めて高感度に再現性の高い計測結果を得ることができた。対照として20歳代健常人末梢血好中球を用い比較検討した結果、口腔癌患者、難治性感染症患者共に好中球O_2・-産生能は健常人に比較して低下傾向を示し、臨床経過の改善に伴って上昇することが確認された。また、in vitroでの好中球と抗菌剤との協同的殺菌作用に関して、測定開始前後に測定反応系に各種抗菌剤を添加し、その影響について検討したが、一部の抗菌剤は非水溶性であったため測定結果に影響の少ない可溶性溶媒を現在検討中である。 臨床分離菌株に対する好中球の貪食殺菌能の測定については、臨床検体よりMRSA菌株を分離培養し、これを同定する段階に止まっているが、本研究助成費で購入した密閉式超音波生物試料処理装置は極めて効率的に均一な菌体膜の調製を可能にした。難治性感染症症例に対する強酸性水処理の臨床効果については、本研究助成により強酸性水生成器を購入し臨床応用を開始した。少数例ではあるが、難治性の感染症例において口腔粘膜、顔面皮膚感染部位を強酸性水を用いて洗浄し、臨床的効果ならびに有用性を検討したところ著明な臨床症状の改善が得られた。
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