顎口腔領域の難治性疾患患者の末梢血好中球の機能異常並びに好中球の貧食殺菌能と強酸性水及び抗菌剤との協同的細菌作用の有無をO_2^<・->産生能を指標として検討した。また、臨床分離菌株を強酸性水により前処理を加え、菌体の貧食に伴う好中球のO_2^<・->産生能と好中球膜表面でのインテグリン分子の発現について検討した。 1.好中球殺菌能については、ウミホタル・ルシフェリン誘導体を発光試薬とする化学発光法により高感度に再現性のあるO_2^<・->産生能の計測結果を得た。口腔癌患者12例、顎骨骨髄炎患者10例の好中球O_2^<・->産生能は健常人に比べ低値を示すことが確認され、口腔癌患者6例はMRSAによる術語感染を合併した。 2.好中球O_2^<・->産生能に対する抗菌剤の影響を検討した結果、一部の抗菌剤はO_2^<・->産生を増強し好中球と協同的殺菌作用を示すこと、フローサイトメトリーにより、この相乗的効果は好中球膜表面のC3bセレプターの発現増強によることが明らかにされた。 3.臨床検体より分離培養されたStaphylococcus aureus1×10^8個/m1を30秒間強酸性水処理を施し、分離菌の貧食に伴う好中球O_2^<・->産生能を測定した結果、強酸性水処理により約35%の最近が死滅することが明らかにされた。同様に、分離菌刺激による好中球膜表面のCD11b、CD18の発現をフローサイトメトリーにより解析した結果、強酸性水処理により約80%の菌が障害を受けることが明らかにされた。 4.MRSAに罹患した症例において口腔粘膜、顔面皮膚感染部位を強酸性水を用いて局所的に洗浄した所、著明な臨床症状の改善が得られ、強酸性水の臨床的有用性が確認された。また、MRSA感染症における抗菌剤Vancomycinの至適投与基準を血中濃度モニタリングにより確立し得た。
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