研究概要 |
平成7年度の研究は同種細胞を用いた培養上皮移植に関する研究であった.本年度の研究において明らかになったことは,われわれの培養系において,上皮細胞中のランゲルハンス細胞(LC)がほぼ消失することである.しかし,口腔粘膜細胞と表皮細胞とを比較した結果,これらに有意な差は認めなかった.LC消失に関する詳細なメカニズムは今後さらに検討を要するが,現在までの結果から培養中の上皮細胞のうち比較的早期にLCが消失し,培養上皮の抗原提示能が低下していることがわかっている.このことは,培養上皮移植の際に同種細胞を用いた培養上皮を用いることが,免疫学的に見ても可能であることを示している.さらに,本培養上皮を用いて動物に移植実験を行った結果,自家細胞,同種細胞共に,初期の生着に差はなかった.このことは培養操作によりLCが消失する結果を反映していると考える.さらに平成7年度は,当初の研究目的に加えて,培養中のケラチノサイト(KC)に対する非特異的抗原提示能に関しても検索を開始した.すなわち培養中にLCが消失し,さらに凍結保存によってKCの抗原提示能が低下することは,さらに同種移植の有用性を高める結果となると考えたためである.したがって,平成8年度にはKCの抗原提示能に関する凍結の影響を検討したい.また平成7年度は以上の結果に加えて従来より行ってきた自家細胞を用いた培養上皮移植を行い,臨床応用をさらに確立することができた.また凍結保存後の自家培養上皮移植を行った結果,生着率など非凍結のものと差異はなく良好な生着率が得られた.したがって平成7年の研究結果から,同種培養上皮移植のために不可欠と考えられていた,免疫源性の低下,および凍結保存の可否は,ほぼ解決されたと考える.
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