研究概要 |
HAの欠点を補って,軟組織でも効果的にHAー骨複合体を形成させるには,骨形成因子などとの併用が望ましいと考えられ,本年度は効果的な臨床応用を目的に,自家骨髄(BM)との併用移植と組織再生誘導法(GTR法)との併用を検討した。 (1)HAとBMの混合移植における骨形成について これまでの検討から,最も骨伝導性と安定性に優れたCa/P 1.65で,数+μm以上の連続気孔を有するHA顆粒を用い,体積比が1:1となるように混合し,家兎腹部皮下に移植,混合移植における骨形成とHA-骨複合体の様相について検討を行った。 その結果,この混合移植における骨形成は,最初にHA顆粒間にBMが誘導した類骨が形成され,それが成熟してHAに接するように骨組織が形成される過程を示し,その後は,HAと新生骨が環状に配列し,その内部に骨髄を有する,あたかも長管骨を輪切りにしたようなHA-骨複合体の形成を認めた。この長管骨類似の構造は,長期にわたって添加・吸収を繰り返す安定したHA-骨複合体を形成したものと考えられた。 (2)HAの骨伝導性に与えるGTR法の効果 Ca/P 1.65,Mg含有量0.16%のHAブロックを作製し、前年度で報告したように2×2.5mmの間隙をもつ「下駄」状の形態に形成した。GTR法の膜には,Gore-Tex社製延伸ポリフッ化エチレン,Cardiovascalar Pach Typeの厚さ0.55μm,フィビリル長30μm,平均気孔径5μmのものを用いた。家兎脛骨近心内側の平坦な面に,HAブロックを置き,その上に膜を被って固定し,経時的にHAの間隙および周囲の骨形成を観察した。 その結果,HAブロックのみの対照群に比べ,GTR群では,HAブロックの間隙部のみならず,全周にわたって良好な骨形成を認めた。これは,膜によりHAへの結合織の介在を防ぎ,骨側からの骨形成因子を効率よくひき出し,HAの持つ骨伝導性の作用を増強させたものと考えられ,臨床応用には有効な方法の一つと考えられた。
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